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経済財政諮問会議で発言する石破茂首相(中央)=2025年3月10日午後7時1分、首相官邸、岩下毅撮影

 春闘の集中回答日を前に、政府は10日の経済財政諮問会議で、専門家を呼んで賃上げ策を練る「特別会合」を開いた。石破茂首相は「昨年の勢い」での大幅な賃上げを改めて労使に呼びかけた。賃上げムードの維持に躍起になる背景には、物価高が再燃し、消費者の春闘への期待がしぼむことへの危機感もある。

 賃上げの「特別会合」は、昨年11月に続いて2回目。物価の研究で知られる渡辺努・東大大学院教授らを招いて非公開で議論した。首相は最後のあいさつで「賃上げこそ成長戦略の要。力強いモメンタム(勢い)を定着させる」と決意を示した。

 だが、新たな賃上げ策の検討は深まらなかったもようだ。十倉雅和・経団連会長ら諮問会議の民間メンバー4人が連名で出した提言は、「労務費をふくむ適正な価格転嫁」「リスキリング(学び直し)の支援」など、すでに取り組む施策が中心。人手不足の職種に手厚く配分する「メリハリある賃上げ」で、働き手の転職を促すことも求めたが、対象の職種は示していない。産業界には、経営の根幹にかかわる賃金水準の決定に介入されることへの抵抗感が強い。政府ができる「打ち手」は多くないのが実情だ。

 一方、労働組合の中央組織・連合の集計によると、今年の春闘で傘下組織が要求した賃金のベースアップ率は平均4.51%で、昨年(4.30%)を上回った。このため、12日の大企業の集中回答日には、大幅な賃上げでの決着が相次ぐとの見方も多い。

 首相は昨秋に、労使に対し…

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