民間委託の事業者が雇用する福岡市の水道検針員の賃下げに歯止めをかけ、「画期的」と言われた「労働協約の地域的拡張適用」が3月末、1年で終わることになりました。労働組合を通じた訴えで、結果的に賃金水準は維持される方向ですが、この制度や民間委託の課題が改めて浮き彫りになりました。
「うそやろ」「仕事を続けられるんかな」
昨年11月8日。福岡市の水道検針員たちに動揺が走った。市内3地区の一つの東部ブロックで、委託事業者が代わることが決まったからだ。
それは、昨年勝ち取った「労働協約の地域的拡張適用」の前提条件が、わずか1年で崩れることを意味していた。
労働協約は労働組合と、企業など雇う側との間の約束で、就業規則や労働契約に優先する強い効力を持つ。
労働協約の地域的拡張適用は、労働組合法18条で定められており、労働条件の切り下げ競争を防ぐ効果がある。「同種の労働者の大部分」が一定地域で同じ協約の適用を受ける場合、同業他社を含む地域全体の労働者にも適用される仕組みだ。
民間委託で賃金格差、認められた「地域的拡張適用」
福岡市水道局はもともと、水道検針・徴収業務を市水道サービス公社に一括委託していた。それを2009年度から段階的に、西部・中部・東部の3ブロックに分けて民間委託に移行してきた。
事業者は5年ごとの公募で管理方法や委託料の提案を審査して決まる。
ただ、同じ仕事でありながら…