今春の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられた訪問介護。賃金カットを余儀なくされる事業者もいて、人材不足による在宅介護の崩壊への危機感は強まるばかりだ。衆院選投開票日が迫るなか、各党の政策を見極めようとする動きも出ている。

 「ヘルパー不足は国の責任」

 「介護を家族に背負いこませるな」

 19日午後。東京・新宿の繁華街で、ケアワーカーや障害当事者らが集会を開き、デモ行進した。労働組合などが呼びかけた「ケアデモ」だ。

 登録ヘルパーとして働く伊藤みどりさん(72)は「現役世代の人が家族に介護が必要になっても、ヘルパーがいなかったら仕事を辞めないといけない。高齢者だけの問題じゃないんです」と通行人に呼びかけた。伊藤さんはホームヘルパーの不安定な労働環境は国の責任だとして国に損害賠償を求める裁判の原告の1人だ。

 厚生労働省は、基本報酬は下がっても処遇改善のための加算は手厚くしたと説明してきた。しかし現場からはマイナス改定後に賃金をカットされたという訴えも。

ケアワーカーや障害当事者らが繁華街をデモ行進した「ケアデモ」。「訪問介護報酬なぜ下げた? 勝手に決めるな」などと怒りの声をあげた=19日、東京都新宿区

 「人材不足のなかでがんばっているのに、賞与が下がるとは」

 訪問介護事業や特別養護老人ホームなどを展開する熊本県の社会福祉法人の男性介護職員(48)は、そう嘆く。今夏の賞与減額の理由に法人側があげたのは、訪問介護など在宅介護部門の赤字だった。

「事業廃止も検討中」切実な声も

 男性は6月まで訪問介護事業…

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