時代とともに移ろいゆくファッション、それを研究するとはどういうことか。東京大学で2023年に開かれた4日間の集中講義が「東大ファッション論集中講義」(ちくまプリマ―新書)として書籍化された。著者の平芳裕子(ひろこ)・神戸大大学院教授(表象文化論、ファッション文化論)は、ファッションという分野に特有の多様さと複雑さこそ、研究の妙味だと語る。
東大の大学院生だった1990年代半ば、著名な教員から「ファッションは浅い」と否定されたという平芳さん。研究対象として珍しくなくなった今日でも、なお「ファッション研究」には独特の難しさがあると話す。
そもそも、ファッションという言葉の定義からして幅広い。「モノとしての服を指すこともあれば、流行現象でもあり、誰かに見られるイメージとしても存在する。家政学や社会学、芸術学などいろいろな学問領域に研究者は存在しているけれど、分野を超えて連携する機会がなかなかない」
日本のファッション史におい…