強引な政治手法に批判がつきまとうが、「選挙モンスター」の異名のとおり、選挙で強さを発揮する。そんな河村たかし前市長の国政転身にともなう名古屋市長選が10日に告示される。名乗りをあげる候補者たちが意識するのは、圧倒的な知名度がある河村氏の存在だ。陰の主役ともいえる河村氏の何が市民を引きつけたのか。約15年におよぶ河村市政とは何だったのか。
- 「河村政治15年」の踏み絵 名古屋市長選、思惑にじむ戦略的な距離
衆院選投開票日の10月27日、河村氏に1票を投じたという名古屋市中区の会社員女性(57)は、「庶民派」を掲げる河村氏の看板政策の一つである市長報酬の年800万への引き下げを念頭にこう語った。
「自分の給料を下げて、軽自動車に乗って。1人でもああいう方がいれば、政治が変わるんじゃないですか」
河村氏が「総理を狙う男アゲイン」と述べ、突然、国政(愛知1区)への転身を表明したのは10月初旬。見通しが立っていない名古屋城天守の木造復元化など、投げだし批判がくすぶるなかでの選挙戦だったが、河村氏は次点の立憲候補にほぼダブルスコアで圧勝した。
自営業の男性(30)は、名古屋市長時代に退職金を受けとらず、国政でも減税政策を進めたいとする河村氏の主張は「わかりやすい」。
就職で昨年名古屋に来た会社員男性(24)は、すでに河村ファンという。「何をやったのかはよく知らない」が、「自分の給料を減らしたり退職金をもらわなかったり。いいように見えちゃう」。
一方で、河村氏の強烈なキャラクターに距離を置く人たちも。
自営業の男性(60)は「作った名古屋弁でしゃべっている気がする。テクニックが見えすぎて好きじゃない」。会社員男性(41)は「面白いおっちゃん」と好意的だが、「キャラクターが前に出すぎて、どういうことをしたいのか入ってこない」と、ともに河村氏以外に票を投じたという。
問われる「河村マジック」の15年間
賛否両面の立場から有権者の関心を誘う河村市政とは何だったのか。河村氏が一貫して示してきたのは、「庶民派」を掲げる自身と権力が対立する構図だ。
議員や公務員は「既得権益」…