小林至さん

 米大リーグの大谷翔平選手の元通訳、水原一平氏の銀行詐欺容疑事件でスポーツと賭けが注目されている。なぜスポーツを対象にした賭けは広がったのか。その規模は。日本では今後どうなるのか。世界のスポーツ産業事情に詳しい小林至・桜美林大教授に聞いた。

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 スポーツに賭ける「スポーツベッティング」は世界に広がっています。2005年に英国でオンラインでのスポーツベッティングが開放されて以来、イタリア、フランス、ドイツなどで民間ブックメーカーによる賭けが解禁されてきました。主要7カ国(G7)で合法化されていないのは日本だけです。国際刑事警察機構の調査によると、合法・違法合わせ市場規模は330兆円に上るといいます。

 賭けの対象は、野球やサッカー、バスケットボール、アメリカンフットボールなどあらゆるスポーツです。ハンデをつけた試合の勝ち負け、スコア、得点数、選手のプレー時間など賭け方の種類も様々です。

 米国で解禁されたのは18年です。もともと連邦法ではスポーツベッティングは禁止されていましたが、税収増を狙うニュージャージー州が12年に許可する州法を成立させました。州法の差し止めをめぐる訴訟となり、最終的に連邦法が違憲と判断されたのです。

 ニュージャージー州が州法を成立させた際の住民投票では7割近くが合法化に賛成しました。世論の後押しがあったのです。また、合法化の議論の過程では、米国人が40兆~50兆円レベルで海外や違法なブックメーカーを通じて賭けていることも明らかになりました。業者にライセンスを付与し、健全な範囲で楽しむ。それに対して課税をする。すべてガラス張りにして、誰が、いつ、どこで、いくら賭けたかもわかるようにする。反社会的勢力の資金源になるよりは、合法化して管理する方がいいという方向に進んだわけです。

プロスポーツ団体側のメリットとは

 合法化に反対していた米国の…

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