刊行100周年を迎えた「贈与論」の著者マルセル・モース

 社会学者マルセル・モースの名著「贈与論」の刊行から今年で100年。贈り物と格差の関係を分析した物理学者による研究がSNSで注目を集め、「贈与」をテーマとした書籍の刊行が相次ぐ。「贈り物」と「お返し」は、社会をどう変えたのか。「贈与」の意義を考える。

 話題になった研究は、コペンハーゲン大学教授、東京大学名誉教授の金子邦彦さんと、理化学研究所基礎科学特別研究員の板尾健司さんが昨年9月に発表した論文。贈り物の頻度や、返礼を豪華にすることが社会構造に変化をもたらすことを、統計物理学のアプローチから分析した。様々な書籍や研究にあたったが、重要な資料の一つが1925年刊行のモース「贈与論」だった。

 「贈与論」によると、アメリカ先住民の儀礼的な贈答競争「ポトラッチ」では、相手を蹴落とすように競って盛大に贈答をしあい、財産が尽きて返礼ができなくなると体面や名声を失う。ときに「債務奴隷」として身体的な拘束を受けたという。

格差のない仮想社会に、贈与の習慣が入ると…

記事の後半では、行きすぎた資本主義のすき間を埋めるものとして、贈与に光が当たり、贈与を中心に据えた社会実験が今春始まることなどを紹介します。

 金子さんと板尾さんは、「贈…

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