4月17日、米ロサンゼルスでのナショナルズ戦の六回、打席途中で球審にジェスチャーするドジャースの大谷翔平選手=AP

 ほんの数分、太陽の下を歩いていただけで汗だくになった。7月16日、米テキサス州アーリントン。レンジャーズの本拠地球場では、大リーグのオールスター戦が開催された。

 屋根がついた場内も、外の暑さに負けないほどの熱気であふれていた。3万9343人の観客、そして数百人の報道陣が最高峰の選手たちのプレーを見守った。ナ・リーグの「2番・指名打者」で先発した大谷翔平(ドジャース)が三回に豪快な3点本塁打を放つと大盛り上がりだ。

 試合開始の7時間ほど前、本拠地球場の近くの施設で開かれた全米野球記者協会(BBWAA)の会合で、大リーグ機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナーは笑顔を見せていた。昨季の大幅なルール変更による野球人気の持ち直しや、韓国や英国、メキシコでの公式戦開催といった国際化への手応えを語っていた。

 コミッショナーの話を聞いていて、ふと疑問に思った。球界の未来は本当に盤石なのだろうか――。

 米プロスポーツ界で考えた場合、人気面で大リーグは米プロフットボールリーグNFLや米プロバスケットボールNBAに劣り「3番手」扱いだからだ。米プロサッカーMLSも人気は上昇している。何より、2026年には米国とカナダ、メキシコで男子ワールドカップ開催という起爆剤がある。

 観客動員は確かに増えた。MLBによると、昨季の観客動員はリーグ全体で前年比9.6%増の7074万7365人。1試合平均は同9・1%増の2万9295人で、ここ30年で一番の増え幅だったという。

 海外展開も順調といえる。MLBは今季、「ワールドツアー」と銘打って3月にドミニカ共和国でオープン戦、韓国や英国で公式戦を開催した。来季は日本で開幕戦を行うことが決まっている。未公表だが、MLBの年間収入は8億ドル(約1163億円)以上とも言われている。

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 すべて順風満帆に映る。だが、傘下のマイナー球団を含めた「野球界」となると見方は変わる。

 理由の一つが、20年12月…

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