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補殺されたとみられるヒグマの親子=2025年8月10日午後0時15分、北海道斜里町の羅臼岳登山道わき、提供
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 世界自然遺産・知床にある羅臼岳(標高1661メートル)で、下山途中の男性がヒグマに襲われて死亡した事故で、亡くなった東京都墨田区の男性会社員(26)は走って移動していた際、見通しの悪い場所でヒグマと鉢合わせして襲われたとみられることが分かった。知床財団が調査速報を公表した。

 調査速報によると、会社員は14日午前、通称「560メートル岩峰」の南側を、巻くように移動する狭い登山道でヒグマと遭遇したとみられる。

 現場は岩峰の陰で見通しが悪い場所で、付近では、夏にヒグマのエサとなるアリが途切れなく発生しており、アリを食べるヒグマがしばしば来るという。

 会社員は同行者の友人から離れ、先行して単独で走っていたらしい。クマ鈴を携行し、速さは不明だが、登山全体の行程から類推してもかなり速いペースで下山していたとみられる。

 会社員はヒグマと遭遇し、攻撃を受け、事故現場から南側の山林に引きずり込まれた。遅れて到着した友人が、助けを呼ぶ声を聞き、ヒグマに襲われているところを発見。所持していた「クマよけスプレー」をうたっている製品の使用を試みたが、噴射ができず、効果はなかった。スプレーは、ヒグマには対応したものではなかったうえに、一度使用されたもので内容量がわずかだったという。

 事故の翌日、捜索救助隊が、2頭の子グマを連れ、会社員をくわえて引きずりながら移動する母グマを発見。この3頭を捕殺した。

 知床財団の玉置創司事務局長は「これからも必要な情報や安全対策を積極的に提言したいと考えている。同じような事故を絶対に起こさないために調査速報を出した」と話している。

 事故は今月14日に発生。標高550メートル付近の登山道で、会社員が襲われ、翌15日、約200メートル離れた山中で見つかり、死亡が確認された。

■知床峠展望台付近に親子グマ…

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