【動画】中学生変面師、中西凰華さんが神戸・南京町の春節祭で演技を披露=白井伸洋、宮坂奈津撮影
「変面」をやりたい。中西凰華(おうか)さん(14)が言い出したのは9年前のこと。5歳の子どもの言うことだ、一日二日も経てば忘れる。母はそう思っていたけれど――。
普通の習い事とはワケが違う
2016年1月。神戸市灘区に住む凰華さんは家族で神戸の中華街・南京町を訪れた。中国で旧暦の正月「春節」を祝う祭りが開かれていた。
中央広場では、中国舞踊やカンフーなどの伝統芸能が祭りに華を添えていた。中でも凰華さんの目がひときわ吸い込まれたのが「変面」だった。
変面は音楽に合わせて踊りながら顔に着けたお面を一瞬で別のお面に変える、中国・四川省発祥の伝統芸能だ。
その技は自分の子どもや1人の弟子だけに教える「一子相伝」とされる。
ふつうの習い事とはわけが違う。母の由美子さんは「子どもにはできないよ」などと伝え、ほとぼりが冷めるのを待った。
「子どもでもできる」
凰華さんは見逃さなかった。南京町のステージでは自分と同じくらいの子どもも中国舞踊などを披露していた。
どうすれば変面ができるのか。神戸市中央区には華僑の子どもたちが通う神戸中華同文学校がある。
両親は日本生まれ日本育ち
当時通っていたバレエ教室に、同校に通学している先輩がいた。
部活動には中国の伝統芸能もあるという。「私も行きたい」と凰華さんはせがんだ。
「これは本気だ」と感じた由美子さん。しかし両親は日本生まれ日本育ち。周りに中国にゆかりのある人はいない。
中国語は自分で習得することを条件にして、保育園を卒園後、同校に入った。
もともと「コピー能力が高い」(由美子さん)という凰華さんは入学するとあっという間に中国語をマスターした。発音もネイティブ並み。数々のスピーチ大会で優勝するようになった。
「3年待ってくれ」
だが中国語はあくまで手段、真の目的は変面を教わること――。学校には一子相伝の技を指導してくれる人はいなかった。
少ない情報を頼りに、国内の…