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南極にあるニュートリノ観測施設「アイスキューブ」©Felipe Pedreros, IceCube/NSF

 千葉大などの国際研究チームは15日、宇宙に飛び交う超高エネルギー宇宙線の主成分が、定説とされてきた「陽子」ではなく、「より重い原子核」だとする研究成果を、米科学誌フィジカル・レビュー・レターズ(https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.135.031001)に発表した。

 南極にあるニュートリノ観測施設「アイスキューブ」の約13年分の観測データを調べた結果、明らかになった。チームは主成分について「40年以上の議論に終止符を打った」としている。

 宇宙線は、ほぼ光速で宇宙空間を飛び交う極小の粒子。中には高速で飛ぶテニスボールと同じくらいの、桁違いに高いエネルギーのものもある。しかし、どこでどうつくられるかは謎に包まれている。

 その超高エネルギー宇宙線は、主成分も明らかではなかった。宇宙空間にたくさんある「陽子」とする説が主流だが、「より重い原子核」とする実験結果も一部にあった。ただし、それらの実験は地上で宇宙線を直接観測するため、結果には宇宙線が大気中の分子とぶつかることによる不確定性が避けられなかった。

 謎に包まれた超高エネルギー宇宙線の正体を解明するため、チームはニュートリノという素粒子に着目した。ニュートリノは宇宙線が宇宙空間を進む中でも生み出されるが、非常に小さく電気を帯びていないため、ほかの物質と反応したり、磁場に曲げられたりすることがない。地球までまっすぐ飛んできて、大気中の分子とぶつかることもほぼなく、直接観測と比べて不確定性が小さい。

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アイスキューブ実験のイメージ

 アイスキューブは、南極にある世界最大のニュートリノ観測施設。氷河の中の約1立方キロメートルに5千個ほどの検出器が埋めてある。地球に届くニュートリノが、ごくまれに氷河とぶつかるときに出す光を検出する。チームは2010~23年の観測データを解析。超高エネルギー宇宙線の主成分が陽子なら、宇宙空間を進むうちに極めて高いエネルギーをもつ「宇宙生成ニュートリノ」ができるとされており、それが実際に見つかるかを調べた。

 結果、宇宙生成ニュートリノ…

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