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写真・図版
ARの技術でスマホに再現された碑を見る参加者=2025年6月20日、群馬県高崎市、高木智子撮影

現場へ! 壊された朝鮮人追悼碑(1)

 「これは、すごい」「ほら、追悼碑が見える」

 戦後80年の夏を控えた6月20日、群馬県高崎市にある県立公園群馬の森で市民団体が開いたフィールドワーク。雑草が生い茂った荒れたエリアで、一行から歓声があがった。スマートフォンで、手元にある紙に印字されたQRコードを読み取ると、その手元の小さな画面に、群馬県によって撤去された朝鮮人追悼碑が浮かび上がったのだ。

 AR(拡張現実)の技術によって再現された碑。画面から目を外すと、そこには更地が広がるだけである。「物体としては失われましたが、ここにくればスマホでみることができるんです」と、案内役の元教員、川口正昭さん(65)が説明する。

 スマホの画面に浮かび上がった碑には、「記憶 反省 そして友好」と刻まれたかつてのモニュメントが、はっきりと映し出されていた。

写真・図版
ARの技術でスマホに再現された朝鮮人追悼碑=2025年6月20日、群馬県高崎市、高木智子撮影

県議会全党派が賛同し県有地に

 碑が建立されたのは2004年4月のことだ。かつて県内の鉱山や軍需工場などには、日本が植民地支配していた朝鮮半島から動員された人たちがいた。そんな歴史を資料や証言から掘り起こした市民らが、犠牲になった人たちを悼むため、戦争を体験した世代の県議らにかけあった。県議会の全党派が賛同し、碑を県有地である県立公園につくることが決まったのだという。

 ところが、そこからが大変だった。碑の名前をどうするか。碑文にどう刻むのか。

 市民側は、戦時中の日本の加…

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