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「ゼロ」で死ねるか

 昨秋、東京都内のマンションで一人暮らしをしていた93歳の男性が居間で倒れているのを、訪れた証券会社の担当者が発見した。

 慌てて救急車を呼んで病院へ運んだが、男性はまもなく死亡した。

 男性は2018年に妻(当時88)に先立たれ、子どもはいなかった。頼れる身寄りはおらず、部屋はかなり散らかっていた。時折、ヘルパーや証券会社や銀行の担当者、税理士らが訪れるぐらいだった。

 税理士は男性の生前に、こんなアドバイスをしていたという。

 「万が一に備え、亡くなった後のことを任せられる『死後事務手続き』の契約を業者としておいた方がいいですよ」

 だが、男性は断り続けていた。「まだ早い」と。

個人金融資産2141兆円の6割を60歳以上が保有し、「老老相続」が当たり前の日本。老後に備えてお金をためこむのではなく、使い切る。そんな「DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)」という考え方が今、静かなブームになっています。果たして実現できるのでしょうか。5回の連載で考えます

 男性の死後、自治体が戸籍を…

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