最高裁判所=東京都千代田区

 車の運転記録を提出しなかったことで生活保護の支給を停止したのは違法だとして、三重県鈴鹿市の親子が停止処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(中村慎裁判長)は鈴鹿市側の上告を退けた。12日付の決定。処分を取り消し、市に計11万円の賠償を命じた二審・名古屋高裁判決が確定した。

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 原告は、膀胱(ぼうこう)がんを患って長い距離が歩けない女性(82)と難病を抱えた次男。

 一、二審判決によると、親子は2019年から生活保護を利用し、21年に次男の通院に限り車の使用が認められた。市からは運転記録の提出を求められたが、親子は提出せず、他の用途にも車を使っていた疑いが発覚したため、市は22年に生活保護の支給を止めた。

 一審・津地裁は、利用目的を限定した市の判断に合理性はなく、記録提出も「過剰の疑いがある」と指摘。通院以外で車を使った違反は軽微だったのに、生命の危険も生じ得る支給停止をしたのは「相当性を欠いて違法」とした。二審も違法性を認めた。

 厚生労働省は、生活保護利用者の車使用を通院や通学などに限り認めていたが、24年、日常生活に必要な買い物なども認める通知を自治体に出している。

 第一小法廷は決定で、上告ができる理由にあたる判例違反などがないとだけ判断した。

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