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【動画】能登半島地震で倒壊したビルの下敷きになった居酒屋が川崎市で再開=小林孝也撮影

 川崎市川崎区にあるビルの地下1階に10日、居酒屋「わじまんま」がオープンした。店主の楠健二さん(56)は元日の能登半島地震で石川県輪島市にあった自宅兼店舗を倒壊したビルに押しつぶされ、妻と娘を失った。残された家族のため、新たな一歩を踏み出した。

「わじまんま」店主の楠健二さん=2024年6月10日午後3時8分、川崎市川崎区、金居達朗撮影

 開店準備が進む10日午後、店の前はお祝いのコチョウランやヒマワリで華やいでいた。

 「喜んでいいのか、わかんないね。普通、開業っていうのはわくわくするものだけど、俺の場合はそうじゃないからさ」と楠さんは言う。

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「わじまんま」の開店に合わせて、楠健二さんの元には関係者から多くの花が届いた=2024年6月10日午後0時27分、川崎市川崎区、金居達朗撮影

 店の入り口に掲げた木の札には、「復興中」と書いた。隣に添えた「営業中」の文字よりも、ずっと大きな文字で。

 「俺の心が復興中っていうのもあるけど、能登が復興中ってことがどんどん忘れられてる気がする」

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「わじまんま」の入り口には、「復興中」の札が掛けられていた=2024年6月10日午後3時19分、川崎市川崎区、金居達朗撮影

 店内には「輪島ふぐ」「能登かき」と書かれた手製のお品書きがかかり、「能登誉」「千枚田」といった能登の地酒が並ぶ。

 「輪島の魅力を発信できる店にしたい。地震が忘れられないようにするためにも」

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「わじまんま」の開店前に本日のおすすめが書かれていた=2024年6月10日午後3時27分、川崎市川崎区、金居達朗撮影

 元日の夕方、楠さんは自宅兼店舗の3階で、妻の由香利さん(当時48)や、川崎市から帰省していた看護専門学校生の長女珠蘭(じゅら)さん(同19)ら家族5人でゆっくりと過ごしていた。

 激しい揺れに襲われた。その後の記憶はない。飼い犬の鳴き声で気がつくと、すぐそこに地面があった。

 隣の7階建てのビルが倒れ、自宅が下敷きになっていた。

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地震で倒壊したビル。消防隊員たちが救助にあたっていた=2024年1月2日午前10時49分、石川県輪島市、伊藤進之介撮影
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