広州国際モーターショーに展示されたBYDの電動スポーツセダン。BYDのブースは多くの来場者で人だかりができていた=2024年11月16日、広東省広州市、鈴木友里子撮影

 中国で乱立した電気自動車(EV)メーカーが激しい値引き競争を繰り広げ、混乱を起こしている。政府が定めた重点産業に多数の企業が参入し、勝ち残った企業が世界市場をも席巻する競争は、これまでも中国で繰り返されてきた。ただ、業界全体が疲弊するほどの過当競争は中国で「内巻」と呼ばれ、危機感が強まっている。政府も対策に乗り出すが、一筋縄ではいかなそうだ。

 7月上旬、中国・広東省広州市の中古車販売店。中古車がずらりと並んだ約1万平方メートルの巨大店舗で、販売員が「走行距離が少ない」と紹介したのは、座席にビニールがかぶせられたままのEVだった。

 総走行距離はわずか4キロメートル。販売員は「ディーラーから直接運ばれてきた。実質的には新車だ」と明かす。販売価格は新車価格より7万元(約140万円)ほど安く、ほぼ半額だ。ディーラーが販売ノルマの達成や在庫を少しでも現金化する目的で、売れ残った車を販売したことにして新車登録だけ済ませ、中古車として持ち込んでいるのだという。

 中国で今、実際は新車にもかかわらず、中古車市場に流れてくる通称「ゼロキロ中古車」が問題となっている。自動車業界団体が運営するメディアによると、中古車市場で流通する新車登録から3カ月以下、総走行距離50キロ以下の「ゼロキロ中古車」の割合は昨年、12.7%に達していたという。

中古車販売店で売られていた「ゼロキロ中古車」。内装はビニールがかぶせられており、新車同様だ=2025年7月9日、広東省広州市、鈴木友里子撮影

 ゼロキロ中古車の存在はこれ…

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