千日手指し直し局に勝利した藤井聡太名人=2025年5月30日午後11時16分、茨城県古河市のホテル山水

 第83期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)は30日、藤井聡太名人(22)の3連覇で幕を閉じた。最強の挑戦者・永瀬拓矢九段(32)を4勝1敗で退けての防衛。進化した強さの背景にあるものは何か。

  • 藤井名人が3連覇 永瀬九段を退ける 将棋名人戦七番勝負

 2016年、史上最年少棋士になった14歳の頃から藤井名人が語り続けてきたフレーズがある。

 「強くなること」

 「強くならないと見えない景色がある」

 今後の目標を問われる度、口にした。名人奪取や八冠独占などの結果達成ではなく「棋力向上」を戦う動機とした。

 21年、タイトル初防衛を果たした夜の会見で聞いた。なぜ結果に興味を示さないのか――。18歳は言った。「結果ばかりを求めてしまうと結果が出ない時にモチベーションを維持するのが難しくなってしまうので」。普通の10代が持ちそうな「日本一に」「金メダルを」という目標設定とは一線を画すメンタリティーこそが頂点へと駆けていく不動の力になった。

 周到な戦略と強靱(きょうじん)な胆力を盤上に刻んだ最強の挑戦者も4勝1敗で退けた名人は、一段階上の強さに到達している。22歳が番勝負の合間に見せたのは「強くなる」理想だけでなく、勝利を渇望する勝負師の横顔だった。

藤井聡太名人の変化とは。豊島将之九段が語った言葉などをもとに、北野新太記者が読み解きます。

 連勝した第2局の一夜明け取…

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