小泉進次郎農水相が随意契約による備蓄米放出を素早く進めたことが、窮地に追い込まれていた石破政権の局面を変えたことは間違いない。
その状況を苦々しく見つめているのは、自民党の農林族議員たちだ。5月31日、野村哲郎元農水相が小泉氏について、「ほとんど自分で決めてしまう。ルールというのを覚えていただかなきゃいかん」と批判したことが、農林族の思いを端的に示している。
地方で強固な組織力を持つ自民の中で、とりわけ農林族は農業政策への絶大な影響力を誇ってきた。農林族が予算を確保して農協など業界団体を支援し、選挙になれば農協などが組織票を集める――。そんな互恵関係が成り立ってきた。現在でも農協や土地改良団体は、参院選のたびに組織内候補を自民から擁立している。
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その農林族の「牙城(がじょう)」に挑んだのが、2015年に党農林部会長に就任し、農業改革を打ち出した小泉氏だった。肥大化する農協の権益にメスを入れようとした小泉氏は農林族と正面からぶつかり、当時は小泉氏の主張が抑え込まれる形で終わった。当時の対立を経験した農林族が、思わぬ形で農水相に就いた小泉氏への警戒を隠すことはない。
だが、小泉氏に集まる注目は…