連載「薄氷の『農業大規模化』」㊤

集落を見下ろす棚田の一番上に立つ野村文雄さん。秋にはここに700本のろうそくを並べ、地域の人たちのために感謝祭を開く=2025年5月26日午後2時47分、山口県宇部市、松浦新撮影

 コメ価格の高騰がきっかけとなり、農業の担い手が減り続け、高齢化が進む現状にもあらためて注目が集まった。政府が進めるという「大規模化」は、果たしてその解決策になるのか。

 山口県宇部市の海沿いは化学やセメントに代表される工業都市として発展した。一方、内陸の中山間地には農地が広がる。

 ただ、狭い棚田が多く、トラクターなどの農機具は使いにくい。斜面の草を刈るだけでも重労働だ。山が近くに迫り、猿やイノシシなどに作物を荒らされもする。高齢化や後継者不足で、一人また一人と農業をやめていった。

 だが、田んぼは水路でつながっており、誰かが放置すると周辺の農家にも影響する。それもあって、残った農家は集落単位で助け合う形で農業法人をつくり、担い手のいなくなった農地の耕作を続けてきた。

 農業法人は、複数人が共同で農業を営む場合に適した形態だ。宇部の内陸にはいま、そんな集落単位の農業法人が約300ある。実質的な農地の「大規模化」といえる。

進む「大規模化」の実態は

 「今後はさらに集約が進み…

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