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村上太輝夫・論説委員

論説委員コラム「序破急」

 中国が「抗日戦勝80周年」を記念する今年、北京郊外の抗日戦争記念館が全面改装されたというので見に行った。入るとすぐあるのが、近代日本の中国侵略の起源を主題とするコーナーで、日本語の文書が展示されている。明治天皇が1868年に出した「宸翰(しんかん)」の抜粋だ。宸翰とは天皇自筆の文書を意味する。

 「万里の波濤(はとう)を拓開(たくかい)し、国威を四方に宣布し、」。このくだりに、わざわざ赤い傍線が引かれていた。

 続いて日清・日露戦争や第1次大戦での青島(チンタオ)攻略の展示がある。つまり明治維新が日本軍国主義の起点であり、この宸翰が証拠だ、と言いたいようにみえる。確かに勇ましい表現だが、そこまでの意味を持たせるのはさすがに無理がある。そのためだろうか、宸翰の展示には中国語訳がなく、中途半端な印象を受けた。

 ただ、明治維新から一直線に…

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