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 関東大震災から102年となった今月、「略奪や放火をした」などのデマで虐殺された朝鮮人を追悼する動きが神奈川県内で広がっている。一昨年発表された新史料で現場の状況などが判明し、地元の事件に衝撃を受けながらも負の歴史を直視しようとする人が出ているからだ。

写真・図版
善行寺で行われた朝鮮人被害者の法要。手前が灘上智生住職=2025年9月3日、横浜市中区の善行寺、足立朋子撮影

 横浜市では3日に法要が開かれ、13日には茅ケ崎市で追悼会がある。いずれも、2023年に公表された、朝鮮人虐殺を巡る新史料から初開催につながった。この史料は震災2カ月後に神奈川県知事から内務省へ送られたとみられる報告書で、県全体で145人が殺害されたなどと記載されている。

 発掘した市民団体「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」の山本すみ子代表(86)は「排外主義が台頭する中、差別の先に何が起きるか、100年を超えて死者が生者に伝えている」と話す。

「関わりたくない」 断られ続ける中で

 法要があったのは横浜市中区の善行寺。新史料によると、県内で震災直後に殺された145人の朝鮮人のうちの一人が、「氏名不詳」ながら、震災翌日の「九月二日午後三時頃」に、「善行寺前」で民衆に殺されたと記録されていた。

 史料の発見以来、山本さんたちは報告された殺傷現場を一つ一つ訪ね調査している。その中で現住職の灘上智生(なだかみちしょう)さん(58)が供養を引き受けた。「関わりたくない」と迷惑顔をされることも多い中、異例の対応だった。

 寺の言い伝えにない「史実」…

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