朝日新聞で2016年から9年も続く東京の見どころ案内シリーズ「ぶらりふらり」で、なぜか一度も取り上げてこなかった杉並区の荻窪は、かつて文化人らが多く居を構える一方、歴史的な興味がそそられる街でもある。折しも昨年暮れ、戦前、戦中に首相を3度務めた近衛文麿(1891~1945)の荻窪の邸宅が復元され、一般公開された。歴史と文化に彩られたこの街を、歩いた。
近衛の「荻外(てきがい)荘」は、JR荻窪駅から南へ歩いて15分の丘の上にある。現住所は荻窪だが、近衛が購入した約90年前の地名は荻窪の外れの西田町だったことから、その名が付いたとされる。
外観は日本家屋らしい平屋。中に入ると、単なる和洋折衷ではなくオリエントな風情が漂っている。設計は中国やトルコなどを旅した建築家、伊東忠太。応接間の龍紋様の敷瓦(しきがわら)や、客間の動物が行進する様子が描かれた壁紙が印象的だ。
日独伊三国同盟につながる「荻窪会談」を開いた荻外荘
天井の高さは約3メートルあ…