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 全身に響く低いベースの音。つり革をつかんで盛り上がる乗客。ボーカルが叫ぶ。「香川県高松市へようこそ」。ライブハウスと化した電車が、夜の高松市を走り抜ける。

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ことでん車内で歌うボーカル=2025年3月14日、アミノン撮影

 一風変わったこのライブ。

 実は、高松市のふるさと納税返礼品だ。市が初めて返礼品とした音楽ライブが14日、高松琴平電気鉄道(ことでん)の電車(2両編成)の中であった。

 出演したのは、高松市を拠点に活動する、男性4人組パンクバンド「古墳シスターズ」。きっかけは、高松市からのオファーだった。ボーカルの松山航さん(30)は「おもろそうだったから」と引き受けた理由を語る。ただ、バントにとって電車内で歌うのは初めての経験。ライブ前は「ただただ無事に終えられたら」と不安げだった。

 午後8時12分、瓦町駅に集合した約100人が車内に乗り込み、電車はすぐに動き出した。同時に前方にセットされたドラムやギターを使い、バンドメンバーが演奏をスタート。

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ことでん車内で演奏するバンドメンバー=2025年3月14日、アミノン撮影

 ボーカルは、2両編成の車内を行ったり来たりしながら、「ご寄付いただきましてありがとうございます」「ことでんはめちゃくちゃ揺れるので気をつけてください」と声を上げ、観客を沸かせた。

 仏生山駅で40分ほど停車した後に、瓦町駅に折り返した。約1時間のライブで10曲以上が披露された。観客はつり革をつかんで揺れに耐えながら声を出し、ライブ終盤、瓦町に戻る車内で盛り上がりは最高潮に達した。

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ことでんの車内でライブをする古墳シスターズ=2025年3月14日、高松市仏生山町、内海日和撮影

 ふるさと納税の寄付者で、大阪府在住の石崎可奈子さん(34)は「遊びに来たときに乗る機会のあった電車でライブを見られるなんて。楽しかった」と話した。

 市納税課の担当者は「市外の方に高松に来ていただいて、高松市の魅力を存分に知っていただけたと思う」と振り返った。今後も、音楽ライブを返礼品とすることを検討していくという。

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