米中西部ノースダコタ州は「コーンベルト」と呼ばれる穀倉地帯だ。ジョシュ・ガックルさん(50)はこの地で大豆やトウモロコシを育てる。畑の面積は東京都千代田区に匹敵する広さだ。
「米国でつくった農作物を全て国内で消費することはできない。他の国々との健全な貿易関係がどうしても必要なんだ」
貯蔵倉庫から出したクリーム色の大豆を記者に見せながらそう言った。心配するのは、20日に就任するトランプ次期大統領の通商政策だ。
トランプ氏は選挙戦で、全輸入品に10~20%、中国製品に60%の関税をかけると公約した。実現すれば、大豆やトウモロコシの大口輸出先の中国から報復関税をかけられるのは必至だ。
ガックルさんが会長を務める米大豆協会が昨年10月に、全米トウモロコシ生産者協会とともに発表した研究では、米中貿易摩擦の再燃で米国産大豆の対中輸出は年1400万~1600万トン減る見通しだ。貿易摩擦がない場合からほぼ半減するという。
トウモロコシも減少幅は年220万トン(同84.3%減)。これほどの需要減を補う市場は他に存在しない。
ガックルさんらの懸念は決して杞憂(きゆう)ではない。
「米国の農村は維持できないかも」
トランプ第1次政権は中国と…