南シナ海を望む桟橋に立つ。海面は穏やかで、わずか100キロ余り先に中国船団が迫っているとは想像できない。

 フィリピン西部パラワン島西岸のケソン町。中比の船同士の衝突が相次ぎ、「新たなホットスポット」と呼ばれるスプラトリー諸島サビナ礁に最も近い漁村の一つだ。

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 「死と隣り合わせの1週間でした」

 アーネル・レパラムさん(48)が昨年10月の事件を語ってくれた。

南シナ海で中国海警局の船に囲まれた体験を語る漁師のレパラムさん=2025年5月20日、パラワン州ケソン、大部俊哉撮影

 レパラムさんは仲間3人とケソン港を出航。近海で漁をした後、約180キロ沖のサビナ礁を目指した。

 深夜1時ごろ。目的地まで約50キロの地点で、複数の中国船に囲まれた。

 中国海警局と書かれた大小の…

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