石破茂内閣が9日、衆議院を解散した。首相就任からわずか8日後の解散、26日後の衆院選はいずれも戦後最短となる。野党第1党・立憲民主の代表も野田佳彦氏に交代したばかり。この選挙で何が問われるのか? 長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)が語り合った。
総裁選の公約反故? 迷走する石破首相
杉田敦・法政大教授 衆院が解散されました。解散は首相の専権事項だというのは、勝手に慣例化させてきただけで、憲法的な根拠は弱い。しかも、首相選出以前に、石破茂さんは解散総選挙を10月27日に行いたいと表明しました。憲法7条には、天皇は「内閣の助言と承認により」衆院を解散すると書いてあり、首相でなく内閣が主体ですから、組閣してもいない段階で決められるはずがない。これは憲法違反では?
長谷部恭男・早稲田大教授 解散が首相の専権事項ではないのはその通りです。ただ、憲法に明確な規定はなくとも、議院内閣制である以上、衆院を解散する権限は内閣にあるという説は憲法学界でも有力で、その長たる首相になるはずの人が解散表明したことをただちに憲法違反だと言うのは難しい。それよりも問題なのは、解散は予算委員会を開いて野党と議論してからだという主張をすぐに翻したことでしょう。
杉田 石破さんは、「今なら有利」という思惑で行われがちの7条解散を批判してきたのに、変節しました。「裏金議員」についても原則公認の方針だったのが、世論の猛反発で一部を非公認とするなど迷走しています。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係の再調査は拒否。これでは何のために岸田文雄さんが辞職したのかわからない。ブレた対応に「期待したのに裏切られた」という逆効果さえ生んでいます。
長谷部 一方、立憲民主党は、野党連携を進めてくれるという期待から野田佳彦さんを代表に選んだ。野田さんの「右にウィングを広げる」は、選挙に勝つための戦略として間違っていないと思います。日本維新の会に往時の勢いはないし、国民民主党もイデオロギー的に固い政党ではないはずですから、立憲の主張の方に政策をまとめていくチャンスではないでしょうか。
衆院選を前に、いま私たちが考えるべきことは何か。有権者として何を問われているのか。インタビューや対談を通して考えます。
■誰が「よりマシ」か 小異捨…