(30日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区Dブロック代表決定戦 北星大付4―3東海大札幌)
小雨だった雨は視界を遮るほどの雨になった。
マウンドの東海大札幌のエース矢吹太寛投手(3年)は3回まで5三振を奪う好投。しかし四回、雨でぬかるんだグラウンドで、守備の乱れもあり逆転を許す。
さらに1死二、三塁のピンチ。フルカウント。矢吹投手は自分自身に「落ち着け」というように上下に手を動かした。顔を上げ、左腕を振り切る。140キロの直球で空振り三振。次打者はファウルフライで打ち取ると、顔をぬぐい、感情を出さずにベンチに戻った。
今春、甲子園のマウンドに立った。チームは10年ぶりの甲子園勝利を挙げたが、矢吹投手は2試合投げ計6失点。エースとして納得していなかった。再び甲子園のマウンドに戻ってくることを誓った。
しかし選抜以降、チームはなかなか状態が上向かない。春の地区大会は3回戦で完封負け。選抜枠で出場した全道大会は準々決勝で敗れた。矢吹選手は「エースの役割を果たしチームを勝たせる」と力投を続けた。
不運の雨だった。この日の失点は四回の3失点だけ。自責点はゼロ。五回は三者凡退で終わらせた。マウンドを譲った六回、雨はもう弱まっていた。
試合後、涙ながらもエースらしく「天候は関係ない。勝つために気持ちを保って投げた」と話した矢吹投手。「(大学など)次のステージでがんばりたい」と、新たな目標を掲げると、札幌円山球場には晴れ間が広がっていた。