2030 SDGsで変える
SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限は2030年ですが、進展は順調ではありません。これからどう進めていくのか。ガイ・ライダー国連事務次長へのインタビューと、NGO・NPOによるネットワーク組織が発表した提言からヒントを探ります。
多国間主義を立て直す56の行動に合意
――国際協力を強化する「未来のための協定」のとりまとめに奔走しました。
193のすべての加盟国が平和構築や資金調達などにかかわる具体的な56の行動に合意しました。国際社会に分断と緊張が生じているなかで、儀礼的な文書ではなく、未来志向の政治文書を採択できたことには大きな意味があります。多国間主義を機能させようとする、加盟国の責任感の表れだともいえます。
――当日の朝までうまく運ぶかわからなかったそうですね。
会議の冒頭、ロシアなど6カ国が修正動議を出しました。否決の先頭に立ったのはアフリカで、グローバルサウスとノースが国際協力を進める点で一致していることを示す象徴的なものでした。ロシアとアルゼンチンはその後、協定から離脱してしまいました。残念ながらこれが今の不安定な国際政治の現実です。
――それでも多国間主義への逆風は、米国のトランプ大統領の再登板もあって強まるばかりではありませんか。
戦争や紛争を解決できず「効果がない」、51カ国で発足した時のままで「公平ではない」という国連批判は理解しています。ですから、安全保障理事会の改革を今度こそ進めます。国際金融機関における開発途上国の発言権も高めていきます。
各国で「自分の国が第一」という声が高まっているのは、格差と不平等が広がっているからです。多国間の枠組みにおいてこそ、自国の国益も増進するのだと訴えていくことが重要です。気候変動の問題をはじめとして、1カ国で解決できる課題はないのですから。
若者の参画や新たな経済指標 試される各国の行動
――SDGsは国際協力の最たるものですが、停滞してしまっています。
コロナ禍の影響があったとはいえ、軌道に乗っているターゲットは17%しかなく、深刻です。今回の協定はSDGsの取り組みを加速させることが大きな狙いです。そのために資金調達の規模を拡大し、民間資金の活用なども増やしていきます。
SDGsがあるおかげで、世界を良くしようとする動きが進む。これだけ世界的に浸透している国連の取り組みはなく、特に日本での認知度の高さには驚かされています。
――理解度との間には開きがありますが、学校で学んで行動につなげている若者は増えています。
それは心強いです。若者の力…