(25日、第77回春季関東地区高校野球大会決勝、健大高崎7―2専大松戸)
健大高崎の佐藤龍月は毎イニング、おじぎしてからポジションにつく。「7番・左翼手」で先発したこの日もそうだった。
グラウンドでプレーできる喜びを、かみしめているのだろう。
「これはもう無理、と思う時もあった」とこの1年間を振り返る。
2024年春の選抜優勝投手は、その年の夏に左ひじを手術。直後は指を動かすだけで激痛が走る状態だった。ベンチ外に回った秋を経て、今春の選抜以降は外野手としてプレーし、ベンチ入りしている。
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代打での出場が主だったが、この関東大会から巧打を買われ先発に抜擢(ばってき)された。オーダー表に名前が載るのは、昨夏の群馬大会以来のことだった。
「最初は緊張しました。甲子園はバッティングで(右腕の)石垣(元気)をカバーできなかったので、今度は石垣をカバーする気持ちで」
東海大菅生(西東京)との2回戦は0―0の六回に右越え2点適時二塁打を放ち決勝点をもたらす。この日は一回の2点適時打など、2安打と2四球で全打席出塁した。
勝負強さで優勝に貢献した姿に、青柳博文監督は「何か持っている」と目を細めた。
投手としてのリハビリは順調に進んでいる。4月にブルペンでの投球を再開し、直球は140キロ超を記録している。
優勝の瞬間、仲間たちはマウンドに集まった。左翼からは遠い。一番遅れて、一番高くジャンプして輪に飛び込んだ。
おどけながら「ずっとピッチャーだったので、かなり気まずかったです」。夏は投手として、みんなを迎える側になる。