高校生が背中合わせで携帯端末を操作する。全員無言の静寂はさながら入試。だが違う。にやりと喜ぶ人がいれば、頭を抱える人も。行われているのは麻雀(マージャン)だ――。
全国高校麻雀選手権大会(朝日新聞社主催)が今年初めて開かれ、主催者想定の3倍を超す195校309チーム、618人の申し込みがあった。同じ学校の2人1組が別々に複数回対局し、合計点でチーム順位を決す。予選は麻雀アプリで。牌(はい)と卓は本選から導入される。想定以上に集った選手の胸中を尋ねると「高校生と麻雀のいま」がみえてきた。
「マジか! 『咲』の世界を体験できる」と出場を決めたのは沖縄国際学院高等専修学校3年の辺予博さん。「このアニメで麻雀をおぼえた点も多い」。アニメ「咲-Saki-」は漫画が原作で、架空の大会に挑む女子高校生の物語。選手にもよく知られる。長野県の松本秀峰中等教育学校4年の小林志瑠さんは「『咲』みたいに高校生が実際に集まる大会は貴重。参加した人の数、この事実が大切」。少なくない申込数に、世間の見る目が変わると期待していた。
「賭けていないか?」大人からの偏見
学校での麻雀のイメージはいまだ芳しくないようだ。北海道の美幌高校1年の佐藤壱輝さんは「賭けていないかと大人に聞かれると悲しい」。自身は麻雀で友を得た。今年、農業を学ぶため、千葉県から北海道へ単身移住。同じクラスにいた自分と同姓の2人に声をかけたら、全員が打てるとわかった。「役ができたような奇跡」。意気投合し、部をつくろうとしたが、難しかった。
公認の部や同好会のある学校は多くない。愛知県の南山高校女子部1年、小坂井志帆さんは「この大会で学校の先生方の注目を集め、自分たちの本気を示す」と意気込んだ。相棒の西村早英奈さんらと部員集めや顧問探しに奔走する。「遊びじゃない。我々の麻雀のイメージは競技、eスポーツです」。部をつくり、年間通じて校舎で練習できる環境を望む。「戦略を立てて強くなりたい。女性にも広めたい」
東京都の中高一貫校、麻布高校の生徒からは6組が出場。1年の永井新之佑さんは「もう1回、同好会をつくる気持ちで盛り上げたい」。学校非公認の同好会はあるが、創設した先輩は受験生になり、会は衰退。大会で好成績をおさめ、学校で麻雀を打てるよう校則変更の相談をしたいと望む。「懸命な姿が知られれば、社会全体のイメージも良くなるはず。この大会を、その始まりにしたい」
「好きなものから世界を救う」麻雀の可能性探究
その傍ら、麻雀の可能性を探…