日本文化人類学会(真島一郎会長)は1日、アイヌ民族についての過去の研究姿勢を「真摯(しんし)に反省し、心から謝罪の意を表明する」と明記した学会声明を発表した。北海道アイヌ協会によると、国内外の学会がアイヌ民族研究について謝罪するのは初めて。
学会の前身にあたる日本民族学会では、内部の研究倫理委員会が1989年、それまでの研究がアイヌ民族の意志や希望の反映という点で「極めて不十分であった」とし、「相互の十分な意志疎通を実現し得る研究体制の確立」が不可欠とする見解を発表した。
今回の学会声明では、当時の見解が、その後の学会活動で「十分に生かされなかった」と指摘。アイヌ民族が日本社会のマジョリティーに向けて発信してきた具体的な意志や要請に学会として支持する姿勢で向き合えず、反省すべき点が少なからず残されたとし、「今日にあってもアイヌ民族の方々の不信感を招き、まことに遺憾」と記す。
その上で、「過去に犯した研究至上主義の過ちは決して清算されうるものではないが、過去を正しく認識し、たえず自省しないかぎり、生身の人間の生に向き合う文化人類学の研究には未来など開かれない」とした。
研究をめぐっては、明治から1970年代にかけて、和人研究者らがアイヌ民族の墓から遺骨を発掘した問題があり、「盗掘同然の方法だった」との批判も強い。
先住民族アイヌの人権を守りつつ研究を進めるため、学会や北海道アイヌ協会などは2019年に「アイヌ民族に関する研究倫理指針(案)」を公表。学会として検討を重ねる中で、今回の声明発表にいたったという。
学会は今年3月末、北海道アイヌ協会などに声明について説明。協会関係者は「信頼関係の構築に向けて、今後の学会の姿勢に注目したい」と話す。(上保晃平)