選挙戦最後の街頭演説には多くの人たちが集まった=2025年7月19日午後7時13分、東京・有楽町

記者コラム「多事奏論」 オピニオン編集部記者・田玉恵美

 その日、島村紀代美さんは名古屋から東京行きの新幹線に乗り込んだ。愛知県日進市の市議として、厚生労働省に相談したいことがあった。

 だが心細い。自分が頼んで国が動いてくれるのか。地元選出の国会議員の顔が思い浮かんだ。応援したことはなく特に親しくはないが、知らない仲でもない。

 思い切って携帯を鳴らすと、相手は愛知へ戻る新幹線に乗っていた。「わかった。降りてすぐに東京へ引き返す」

 議員と落ち合い、説明した。障害のある未就学児が通う市の施設から、自前で給食を作るための調理室がなくなってしまう。外から持ち込まれる給食で、そしゃくが難しい子のために食材を細かく刻むなどの配慮が行き届くか心配だ。

 一緒に厚労省へ行くと、議員…

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