「このトランプには不思議な力があります」。カードを重ね、サッと手をかざす。すると、あっという間に別の柄に。放課後の教室には「魔法」の技を磨く若いマジシャンたちが集まっていた。
南山高校・中学校男子部(名古屋市昭和区)の奇術部は1974年創部。50年の歴史を持つ全国的に見ても珍しい部活だ。現在の部員は約40人。大がかりな仕掛けを使ったイリュージョンからカードマジックまで多様なスタイルの手品を披露する。プロのマジシャンとして活躍する卒業生もおり、2月には50周年イベントを開催。約300人が集まった。
「魔法」が教えてくれること
2012年から2代目顧問を務めるのは保健体育教諭の中谷豊実(とよみ)さん(63)だ。
道化師「ボッチ☆アダムス」という顔も持つ。鮮やかな色の衣装に身を包み、真っ赤なつけ鼻をつけたクラウン(ピエロ)に扮して、病院やホスピスを回る。訪問した回数は800を超える。
そんな中谷さんが顧問として大切にしているのが、外部の人たちに向けてパフォーマンスする場を作ること。生徒たちを連れて、児童養護施設や老人ホームを巡る。昨夏には震災の傷痕が残る能登半島を訪れ、子どもたちにマジックを披露した。
部の合言葉は「幸せのための…