くねった山道を進んでいくと、突然目の前が開け、海が広がった。遮るものが何もない角力(すもう)灘(なだ)の海原と、後ろに背負う深い山は、小説「沈黙」の舞台「トモギ村」を思い起こさせる。
「沈黙」は、キリスト教が禁じられた江戸時代に宣教師としてひそかに来日したロドリゴや、何度も裏切りながらロドリゴを追う信徒キチジローが、自分の中の信仰を問う物語。長崎市外海(そとめ)地区はその舞台のモデルになった。
【撮影ワンポイント】沈む夕日と遠藤周作文学館
「道の駅 夕陽が丘そとめ」から、24―70ミリ、70―200ミリの2本のズームレンズを用意し、三脚は使わず手持ちで撮影した。沈みゆく夕日に照らされる「海」と、黄色からオレンジ色に染まる「空」を印象的に見せるため、露出はアンダー目で撮影し、建物のステンドグラスが分かる構図にした。天気は重要で、2回目でようやく夕日が撮影できた。(日吉健吾)
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「神様が僕のために取っておいてくれた場所」
作者の遠藤周作は、「神様が僕のために取っておいてくれた場所」と話すほど、この地を愛したと伝わる。遠藤周作文学館も、この場所に立つ。


学芸員の林田沙緒里さん(35)は、「沈黙」を遠藤文学の「区切り」となった作品だと話す。大病を患い、「神」との距離感に悩んだ周作は、拷問を受けキリスト教を捨てた「転び」につながりを感じたとみる。

■貧しかった村がひそかにつな…