丸山椋介選手(左)と高岡禎監督=糸魚川市

(第106回全国高校野球選手権新潟大会)

 かつては選手1人と監督1人だけだった。所属する連合チームの試合や合同練習には一緒に赴いた。帰り道ではラーメンや「デカ盛り」定食を2人で食べた。そんな師弟関係が今夏、一区切りを迎える。

 2年前、海洋の野球部に部員はいなかった。だが、当時新入生の丸山椋介(りょうすけ)選手(3年)は意に介さなかった。

 野球は1人ではできないが、野球部の活動は1人でもできる――。こんな信念を持つ高岡禎(ただし)監督と出会ったからだ。高岡監督自身も「ちゃんと高校野球をさせてやるのが私の務め」と奮い立った。

 2人だけのキャッチボールとノック。打撃マシンに球を入れるのは高岡監督の役目だった。丸山選手が20球打つたび、2人で球を拾った。

 高岡監督は丸山選手に投手としての可能性を感じた。制球とフォームがいい。「140キロの球を投げられる投手になれ」と発破をかけた。

 そして今、機器がなくて計れないものの、球速は140キロに達していると高岡監督は信じている。ただ、丸山選手自身は「速くなったとは思うけど……」と苦笑する。

 現在、部員は丸山選手を含めて10人。「丸山がいなければ、これだけ増えなかった」と高岡監督はたたえる。ただ新潟大会にはこれまでの経緯などから、今年も連合チームで出場する。大会に向けては「納得いく投球をして欲しい」としつつ、「(目標の)140キロは下方修正しないぞ」と伝えている。

 最後の「夏」に臨む丸山選手は決めている。文字通り二人三脚で歩んでくれた高岡監督に勝利をプレゼントする、と。「先生のおかげで野球選手として、高校生として成長できました。結果を出して恩返しします」

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