高校野球の春の神奈川県大会を7年ぶりに制し、喜ぶ横浜の選手たち

 選抜高校野球大会を制した横浜(神奈川)が、昨秋から続く公式戦での連勝を「25」に伸ばしている。春の神奈川県大会決勝では延長の末、東海大相模にサヨナラ勝ち。関東大会でさらなる記録の更新を狙う。

 選抜で優勝してからのチームを、村田浩明監督(38)はこう振り返る。

 「甲子園から帰ってきて、1回燃え尽きた後にすぐ大会があった。やっぱりまだ高校生。思うようにいかないところがたくさんあった」

 選抜のときほどの集中力が発揮できていない場面が、あったという。

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 チームが目指しているのは、大リーグ・レッドソックスなどで活躍した松坂大輔さんを擁した1998年以来となる甲子園春夏連覇だ。過去8チーム(大阪桐蔭は2度)しか達成していない大記録。それだけ、勝ち続けることは難しい。

 偉大な先輩に肩を並べるためには、選手たちのモチベーションを保つことが不可欠だ。村田監督はさまざまな工夫をこらしている。

 春の神奈川県大会の期間中に、選手数人を連れて向かった先はボクシングジム。プロボクシングの世界4団体統一王者で、「モンスター」の異名で知られる井上尚弥選手が所属する大橋ジムだ。ジムの大橋秀行会長が横浜高の卒業生という縁で、練習見学が実現した。

 井上選手は2012年のプロデビュー以来、無傷の30連勝。勝ち続ける様は、いまの横浜の選手にとって何よりの手本だ。エースの奥村頼人は「近寄りがたい」集中力のスパーリングを目の当たりにし、「人生で初めて圧倒された。井上選手は基礎練習を忠実にやっていた」。

 部員のために映画の鑑賞会を開いたこともあった。流した作品は、151連勝を記録した米国の高校アメフト部がモデルだった。

 かつての赴任先の高校を選手たちとともに訪れ、美術部が扱う陶芸の窯をのぞかせてもらったこともあった。千度を超える炎を目にすることで、闘争心を刺激するのが目的だった。「野球以外のことも含めて、どれだけ熱い思いを彼らに落とし込めるかをやってきました」

 監督の思いは、選手たちにも伝わっているようだ。

 劇的なサヨナラ勝ちで春の神奈川県大会を制した直後も、奥村頼に浮かれた様子はなかった。「勝ち切れたことは良かったけど、課題も見つかった。もっともっと成長して夏を迎えたい」。「常勝」を欲する意識が、選手たちの中で育まれつつある。

 関東大会での横浜の初戦は18日。茨城県のひたちなか市民球場で作新学院(栃木)と対戦する。

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