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近藤哲朗さん(左)と吉備友理恵さん=2025年7月1日、東京都千代田区飯田橋、菊池康全撮影

 「202X年10月23日 選択的夫婦別氏制度の制定後 婚姻届提出」

 東京都内に住む事実婚カップルの吉備(きび)友理恵さん(32)と近藤哲朗さん(38)は5年前、それぞれの両親に2人の結婚を説明するための「プレゼン資料」を作った。

 シンクタンクを運営し、社会課題の情報や概念を図解して分かりやすく伝えることが仕事の近藤さんと、設計会社で課題解決に向けた人々の連携のあり方を研究する吉備さん。デザインを活用して説明するのはお手の物だ。

 ただ、このときは普段と違う緊張があった。事実婚を、双方の両親が心配したからだ。

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吉備友理恵さんと近藤哲朗さんが、別姓での結婚を両親に説明するためにつくった資料。入籍時期は「選択的夫婦別姓制度の制定後」と書かれている=2025年7月1日、東京都千代田区、伊木緑撮影

 仕事を通じて知り合い、2018年に交際を始めた2人は、ほどなく結婚を意識するようになった。「姓を変えたくない」という吉備さんに、一度は近藤さんが改姓を考えた。だが、近藤さんの両親に言うと2人は肩を落とした。両親の気持ちも大事にしたい。「2人が改姓せず結婚できる道を」と、事実婚を選んだ。

 両家の顔合わせの日、事実婚の不安を解消するための渾身(こんしん)の資料を見せてもなお、両親たちは「婚姻届を出して」と口をそろえた。「数年おきに再検討する」と約束して、やっと納得してくれた。

 20年10月、世帯を一つにする「世帯変更届」を役所に提出し、住民票に「妻(未届)」と記載した日を結婚記念日と決めた。

連載「ニッポンの現在地 2025参院選」

法律や予算によって様々な政策の方向性を決める政治。私たちの生活と直接、間接につながっています。「対トランプ」「物価高対策」など八つのテーマについて現在地と課題をお伝えする連載です。

反対派も賛成派も分断あおらず議論を

 事実婚には、不便も不安もあ…

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