選択的夫婦別姓の導入に向けた立憲民主党と国民民主党のそれぞれの民法改正案と、旧姓の通称使用を法制化する日本維新の会の法案が衆院で審議されている。どの法案も成立の見通しは立っていないが、選択的夫婦別姓ではなく旧制使用の拡大によって、問題は解決するのか。基本権やドイツの憲法判例に詳しい小山剛・慶応大学教授(憲法)に話を聞いた。
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通称使用が拡大されること自体はいいことです。日常生活の煩雑さを和らげ、キャリアの継続にも役立つでしょう。しかし、氏名が個人のアイデンティティーと結びついた人格権であることを考えれば、本来の氏名を名乗ることと、通称の使用は質的に異なるものです。通称はあくまで通称であり、通称の法制化で問題は解決しません。
人はだれでも氏名を使い、他者と接触しながら、自分の人格を発展させていきます。他者によって氏名を繰り返し使われ、自己同一性を確認していきます。氏名は、人格権のうちアイデンティティーを構成する要素として憲法上、保護されており、氏の変更を強いることは憲法上の権利に対する制約になるのです。
家父長的なドイツでも選択的夫婦別姓が実現
ドイツの経験から学ぶことも…