経済学者の坂井豊貴・慶大教授=岩下毅撮影

経済季評 慶応大学教授・坂井豊貴さん

 民主主義の政府は、有権者が期待するバラマキの圧力により、財政赤字を拡大し続ける。かつて経済学者ブキャナンらが「赤字の民主主義」と名付けた現象である。経済学は人間と社会を扱う学問なので、自然科学と比べると法則を確立しにくいのだが、赤字の民主主義については法則と呼んでもよさそうだ。

 20日に参議院選挙が投開票される。主要政党の公約には、給付金や減税が並ぶ。与党は1人あたり2万~4万円の給付金を掲げる。これにかかる費用はおよそ3兆円台半ばと目されている。石破茂首相は、その財源は税収の「上ぶれ分」などであり、赤字国債に依存しないという。しかし日本の一般会計は赤字国債に頼っており、給付金の導入は、その発行額を増やす。

 米国ではトランプ大統領による大規模な法案が可決された。これには大型減税や不法移民対策、低所得者層への支援削減、気候変動対策への費用削減など、主要政策が網羅されている。「一つの大きく美しい法案」というそうだ。米議会予算局は今月1日、この法案が2025年から34年の間に、3.4兆ドル(約490兆円)の財政赤字増を招くとの試算を発表した。

 つい最近までトランプ氏の盟…

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