只野雅人さん

 参議院選挙が佳境を迎えています。この候補を推したいという投票先がない、そもそも自分の1票で何か変わるのかと思う人も多いかもしれません。憲法学者の只野雅人さんは「選挙だけで政治はコントロールできない」ことを前提に1票を入れることが大事、と言います。どういうことなのでしょう。話を聞きました。

  • 自分の1票では何も変わらない? この社会で「選挙権を持つ意味」

 フランス革命に影響を与えた人民主権論の父として知られるルソーが、著書「社会契約論」で語った有名な一節があります。

 「イギリス人民は、自分たちは自由だと思っているが、それは大間違いである。彼らが自由なのは、議員を選挙するあいだだけのことで、議員が選ばれてしまうと、彼らは奴隷となり、何ものでもなくなる」

 主権者である私たちは投票できるけれど、その後、政治が主権者の手から離れていってしまうという傾向を指摘しています。「主権の簒奪(さんだつ)」と言われる現象で、現代にも通じる、代表民主制に対する痛烈な批判です。政治家は選挙に勝ったからといって何をやってもいいわけではありませんが、現状はどうでしょう。

 ただそもそも、主権者は1回の選挙で、政治をすべてコントロールできるわけでもありません。選挙で選ばれた代表者は政治的決断の中身と理由について、主権者に説明責任を果たさねばならないし、私たちも絶えずチェックする必要がある。投票したら終わり、ではないのです。

民意は「複雑な多角形」

 選挙では、政策も複雑にから…

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