加齢とともに短くなる染色体末端の「テロメア」と呼ばれる部分を伸ばす遺伝子治療法を米企業が開発した。テロメアが異常に短くなるため、皮膚や血液、肺、肝臓などさまざまな臓器に症状が出る「先天性角化不全症」という難病患者が臨床研究に参加、経過が米医学誌に発表された。
約100万人に1人というまれな難病で、造血幹細胞のテロメアが短くなると、血液細胞をつくる能力も落ちる。骨髄移植を選択する重症患者もいるが、この病気の場合、合併症が多いことが課題になっている。
米バイオ企業エリクサジェンセラピューティクスの洪実・最高科学責任者らは、造血幹細胞のテロメアの長さを伸ばす遺伝子治療法を開発した。
患者の血液から造血幹細胞を回収し、ZSCAN4という遺伝子を導入する。この遺伝子は一時的に働いて、テロメアの長さを伸ばす。処理によってテロメアが伸びた造血幹細胞を患者の体に戻して治療する仕組みだ。
米シンシナティ小児病院で、30代の患者2人が臨床研究に参加した。治療後、1人は24カ月、もう1人は5カ月までの経過で、安全性を確認。テロメアの長さが正常範囲まで伸びた造血幹細胞が増えていることも確認した。治療効果をみる血液検査の値は正常値になった。
1人の患者は、疲労感が強く…