凄腕しごとにん 柳澤雅子さん(55)
三菱UFJ信託銀行 相続相談第1課長
「自分としても死ぬのはちょっと早いと思うけれども、あなたがいて、子どもたちが無事に育ってくれて良かった」
余命宣告を受けた故人が生前にしたためた遺言書を、遺族の前で代読する。涙をぬぐう姿が目に入るが、自身の感情はぐっとこらえる。遺言書に沿って故人の財産を遺族に分割していく、約半年間に及ぶ「遺言執行人」の仕事の始まりだ。
相続はお金と私情が複雑に絡み合い、時に思わぬ「争続」となる。争いを避けるため、生前に信託銀行や弁護士に相談して不動産や株式を整理し、財産を遺族にどう配分するかを遺言書として残す人は多い。
信託銀行の遺言執行人としての腕の見せどころは、遺言書をもとに相続をいかに円滑に進め、それぞれの遺族が納得する形で財産分割を終えられるかにある。うまくまとまらずに約1年かかる案件もあったが、「そういう時に人間性が鍛えられた。経験を積むにつれてスムーズにできるようになった」と振り返る。
遺言書は道しるべ 「迷っているなら、その通りにやりましょう」
相続の世界に足を踏み入れた…