ニュースを見ることを避けようとする「ニュース回避傾向」がある人が2割近くに上ることが、スマートニュースと研究者らのグループによる全国調査で分かった。避けたいニュースの話題については、有名人のゴシップなど「芸能」が最多で、戦争や紛争のニュースを上回った。
スマートニュースが26日、「メディア価値観全国調査」の結果の一部として公表した。この調査は国内の政治的・社会的分断や人々のメディア接触状況を調べるため、2023年から隔年で実施され、今回が2回目。今年1~3月に国勢調査を元に地域、性別、年代などを反映するように抽出された4460人に郵送で行われ、2117人が回答した。
避けたい話題は「ゴシップなど芸能」がトップ
「最近、あえてニュースを避けることがあるか」と聞くと、「頻繁にある」2.9%、「時々ある」15.2%で、ニュース回避傾向がある人は約18%だった。「たまにある」30.8%を含めると、約半数がニュースを避けた経験があった。
世代別に見ると、「頻繁」「時々」の合計は30代が最も高く22%。次いで70代以上の20%、40代の19%と続いた。60代が13%で最も低かった。
避けたい話題のジャンルを、複数回答で全員に聞いたところ、有名人のゴシップを含む「芸能」が21.7%で最多だった。「戦争・紛争」18.9%、「感動を誘ったり、怒りをかき立てたりするニュース(エモいニュースなど)」18.0%、「ジェンダー・LGBTQなど人権問題」13.3%、「事件・犯罪」13.2%と続いた。
理由について最も多かったのが「気持ちが暗くなる、気分が悪くなる」が60.8%。「関心の持てないニュースまで知りたくない」30.3%、「刺激的で関心をあおるようなセンセーショナルな見出しが多すぎる」26.6%、「事件・犯罪のニュースが多すぎる」24.6%、などが続いた。
また、テレビ番組やSNSのコメントを流用するなど取材の手間をかけていない「こたつ記事」が多いという回答(20.9%)や、報道機関が信頼できないという回答(18.8%)もあった。
スマートニュースメディア研究所の藤村厚夫フェローは「ニュース回避現象は拡大を続けており、世界の報道機関の存在意義を潜在的に脅かす課題の一つとなろうとしている」とコメントした。
こたつ記事や「エモいニュース」も原因に
早稲田大の澤康臣教授(ジャーナリズム論)は「ニュースを回避するのは、自分から社会問題へのつながりを切ることで、心配な傾向だ。社会問題への関心なくして社会の運営はできないし、直感や感情だけに頼れば、権力者や悪意ある扇動者に誘導されやすくなる可能性がある」と指摘する。
ニュース回避は世界的な傾向で、年々強まっている。澤教授は「SNSや動画は刺激的で真偽不明の『疲れる情報』が多く、そこでニュースに接触する層に回避傾向が出ているのではないか」と見る。一方で「回避する話題として芸能や『エモいニュース』が上位にあるのは、世界的に見ても珍しい」と話す。
さらに、「SNSやテレビ番組のネタを拾ってきただけのようなニュースや、安直、手抜き、コスパ重視で取材を伴わない情報が『ニュース』として氾濫(はんらん)すれば、ますます回避を招く可能性がある。メディアの足腰が弱る中で、短期的に数字がとれるかもしれないが、長期的に見放されかねず、結果的に市民が民主主義社会の『地図』となるべきニュースを手放してしまう恐れがある」と懸念を示す。
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