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大阪地裁・高裁が入る庁舎=大阪市北区

 性交渉は同意の上でも、避妊の求めを無視したのはおかしい――。女性がこう訴え、男性に173万円の損害賠償を求めた裁判の判決で、大阪地裁(仲井葉月裁判官)は男性の行為を「女性の性的な自己決定権の侵害」で違法と認め、74万円を支払うよう命じた。

 7月19日付の判決によると、女性はかつて交際した男性と2020年に再会し、「独身だ」といううそを信じてホテルで関係を持った。備え付けの避妊具をつけるよう求めたが無視されて妊娠し、その後、流産した。

 翌21年に再び関係を持ち、この時も避妊を拒まれて妊娠した。ラインで胎児の認知を求めると、男性はすでに離婚していたが、「俺、結婚してるから認知は難しそう‼」と拒んだ。女性はその後、出産した。

 仲井裁判官は男性について、「2回とも容易に避妊できたのにあえて行わなかった」と指摘。「妊娠の身体的・精神的負担は女性だけに生じる」として、「性交渉に同意しても、避妊に応じず性交渉を続ければ女性の性的な自己決定権を侵害する」と判断した。

 その上で、男性は女性の負担や不安を一切顧みず、欲望を満たすために避妊しなかったと言及。うそを言って認知を拒み、「自己責任だ」と主張する不誠実な対応に終始しているとして、慰謝料や流産の手術費用などの支払いを命じた。

 女性の代理人を務めた向井大輔弁護士は「相手に好意があると避妊しないことに強くあらがうことは難しく、裁判まで起こさない人が多い。泣き寝入りしている人の被害回復に道を開く判決だ」と話した。(山本逸生)

女性の権利擁護に取り組む弁護士「画期的な判決」

 「性交渉の同意は、避妊しな…

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