今年の1月1日、日本航空高校石川吹奏楽団(石川県輪島市)でアルトサックスを担当する九尾結月(くお・ゆづき)部長は、地元である輪島市の重蔵神社で巫女(みこ)のアルバイトをしていた。
午後4時10分、激しい揺れに襲われ、結月は慌てて社務所から飛び出した。立っていられないほどの揺れで、神社の建物の一部は潰れ、目の前で石灯籠(どうろう)が倒れた。
「津波が来る! 逃げなきゃ!」
海が近かった。裸足のまま坂道を駆け上がった。大きな津波は来なかったものの、余震が続き、夜になるとまちを焼く火災の炎がはっきり見えた。
LPガスのボンベが破裂したり車が爆発したりする音も響いてきた。有名な輪島朝市のあった地区も燃えていた。結月が身を寄せた避難所は朝市に近く、延焼の危険もあった。恐怖と不安、寒さで震えながら結月は避難所で眠れぬ夜を過ごした。
自宅は倒壊を免れ、正月休みのために持ち帰っていた学校のアルトサックスも無事だった。だが、生まれ育った輪島のまちは変わり果てた姿になり、電気や水道が止まったまま。結月は家族とともに金沢市の祖父母の家へ避難した。途中、道の片側が崩れて崖になっていたり、巨岩が路上に転がっていたりする様子を目にした。
【連載】My吹部Seasons
吹奏楽作家のオザワ部長が各地の吹奏楽部を訪ねます。
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日本航空石川の学校施設も大きな被害を受けた。
結月ら通学生もいるが、多く…