茶臼岳山頂からの雄大な景色に魅了され、訪れる人は絶えない=2025年4月17日午後1時46分、栃木県那須町、岡本智撮影

 春めいた暖かい日が続き、標高2千メートル級の山でも雪解けが進んできた。まもなく本格的な登山シーズンが始まるが、滑落や道迷いなどの山岳遭難は後を絶たない。どんな準備や心構えが必要か。登山歴6年の記者が滑落の現場に赴き、あらためて考えた。

那須岳の地図

 今月5日、栃木県那須町にある「日本百名山」の一つ、那須岳(1915メートル)で事故が起きた。主峰の茶臼岳の登山道で、宇都宮市の40代男性が約200メートル滑落。一命は取り留めたが、右太ももを骨折するなどの重傷を負った。

 那須岳は百名山とはいえ、栃木県山岳遭難防止対策協議会が作った「山のグレーディング」では、ロープウェーで茶臼岳山頂を目指すルートは体力的、技術的に最も容易とされる。ロープウェーで一気に1684メートルまで上れるため、ハイキングがてら訪れる人も多い。

 記者が現地を訪れたのは17日午前。かすみが濃かったが、晴天だった。ロープウェーの山頂駅を降りると、平日にもかかわらず20人ほどの観光客が残雪の風景を楽しんでいた。

那須ロープウェイ山頂駅近くの登山道の分岐。那須岳(茶臼岳)をバックに写真を撮る観光客が絶えなかった=2025年4月17日午前11時15分、栃木県那須町、岡本智撮影

 滑落の現場に行くため、山頂に向かう主要ルートを外れ、茶臼岳の外周を巡る登山道に入ると、私以外には誰もいない。急に心細くなった。「牛ケ首」と呼ばれる分岐点に着くと、体が持っていかれそうな冷たい強風が吹きつけてきた。近くには噴煙が上がる「無間地獄」があり、なにか気味悪い。ますます不安になり、「道に迷っていないだろうか」「斜面はかなり急だな」などと焦る。

 風に耐えながらいつも以上に…

共有
Exit mobile version