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 第106回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)に、愛知代表として出場した中京大中京。開場100年の阪神甲子園球場で、マネジャー含め103人の部員が一丸となって日本一をめざした。全国選手権通算101試合目となった2回戦で敗れたが、創部101年の伝統校らしい粘り強い戦いで、野球ファンを魅了した。

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神村学園―中京大中京 試合後、引き揚げる中京大中京の選手たち=有元愛美子撮影

小学生の「憧れ」 福田選手の応援に70人以上集結

 神村学園(鹿児島)との2回戦。四回に中京大中京の福田心穏(しおん)選手(3年)が2点目となるスクイズを決めると、アルプス席が歓喜にわいた。そこには、福田選手がかつて所属した野球クラブチームの小学生や親族ら70人以上もいた。

 福田選手もかつてアルプス席にいた。小学5年の夏、クラブチームの卒業生を応援したことがある。「次はお前が甲子園に来るんだぞ」。コーチの小石賢治さん(52)はそう伝えたことを覚えている。

 度重なるけがに苦しんだ。小4のとき右ひじを剝離(はくり)骨折。高校入学後もひじは痛み続け、神経の手術もした。

 春の県大会ではベンチ入り出来なかった。それでもショートの守備やバントを磨き、7月の愛知大会ではレギュラーに。最後の夏、甲子園をわかせる選手になった。

 「心の穏やかな優しい子になってほしい」と名付けられた福田選手。いまも年に数回クラブチームにも顔を出す。小石さんは語る。「子どもたちにとって憧れの存在なんです」と。(渡辺杏果、井上昇)

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神村学園―中京大中京 四回裏中京大中京1死一、三塁、福田はスクイズを決める=有元愛美子撮影

2人主将でチームを引っ張った 佐古記録員と杉浦捕手

 敗退し、甲子園で誰よりも泣いていたのは、記録員の佐古響次朗選手(3年)だ。捕手で主軸の杉浦正悦選手(3年)とともに主将を務めた。

 新チーム結成の昨秋、高橋源一郎監督から2人が主将に指名された。憧れの名門校の主将。佐古選手はうれしくも「責任を感じた」という。

 これまでは試合に出る選手が主将を務めてきた中京大中京。ただ佐古選手は、Bチームで練習する一方、主力からなるAチームを含めた野球部全体の主将を務めるという日々が続いた。大差で負けた今春の地区予選の後、佐古選手はサポート役に回ると決めた。杉浦選手は、「サポートしてくれた方が、チームが強くなる」。気持ちを推し量り、その決意を受け入れた。

 杉浦選手が試合中のプレーでチームを引っ張るなら、佐古選手は日頃の練習や運営面でチームを支えた。2人の主将が目指した日本一は届かなかった。「佐古に助けられた1年だった。感謝の気持ちしかない」と杉浦選手。佐古選手は「もう一緒に出来なくなると思うとつらいです」。そう言って、また泣いた。(渡辺杏果)

【1・2回戦の戦いぶり】

○4―3宮崎商(計11安打。杉浦の好走塁、松山、仲の適時打などで得点。中井、田中で継投)

●3―4神村学園(計8安打。岡部、神谷の適時打、福田のスクイズで得点。中井、田中、宮内、飯島で継投)

※全国選手権での通算成績:79勝22敗

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神村学園―中京大中京 試合後、スタンドにあいさつに向かう中京大中京の選手たち=白井伸洋撮影
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神村学園―中京大中京 四回裏中京大中京1死一、三塁、福田のスクイズ成功で追加点を挙げる。投手今村、捕手木下夢=白井伸洋撮影

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