高校思い出クリック~青春群像記~

 高校をシリーズで紹介する企画。今回は東京都立農業高校の2回目です。

 都市園芸科3年の星山瑠璃さん(18)が都立農業に進学した最大の決め手は、インスタグラムで知った「神代農場部」だった。週末に学校農場で活動する課外クラブで、「農作業に取り組む姿が楽しそうだった」。もともと、長野県に住む祖父母の家庭菜園で野菜作りを手伝った経験から、農業に興味があった。

 選んだ部活動は、もちろん農場部だ。

 神代農場は、学校のある府中市の東隣の調布市にある。都立神代植物公園や深大寺の脇にある南北に細長い農場で、敷地の広さは約2万5千平方メートルと広大だ。多摩地域に連なるがけ地「国分寺崖線(がいせん)」の一部で、がけの下からは清らかな水がわき、小川となって流れる。絶滅危惧種のサワガニなどのほか、ホタルも自生。清流に生息するニジマスも、わき水で養殖している。

ご当地わさびの復活を

 農場部がいま力を注ぐのが「三鷹大沢わさび」の栽培だ。約200年前の文政年間に、三重・伊勢地方から一帯に伝わった。根茎は小さいが味が良く、当時の江戸のにぎりずしブームに乗った。だが、市街化が進み、わき水は減り、昭和後期にほぼ生産されなくなったとされた。

神代農場で、わき水を利用して栽培している「三鷹大沢わさび」。入学したばかりの1年生も見学に訪れた=2025年5月27日午前9時59分、東京都調布市深大寺南町の神代農場、山浦正敬撮影

 1軒の農家に残っていた株を後世に残そうと、農場と農場部はこの5年間で、株分けで22株から約150株にまで増やした。次なる挑戦は、花を咲かせて種から一気に増やすことだ。一昨年は5株、昨夏は8株が白っぽい花を咲かせた。「今年も咲くかな」と星山さんは期待する。

 農場部の顧問の宍戸寿教諭(…

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