秋田県男鹿市の酒醸造所「稲とアガベ」と、栃木県那須町で菓子製造などを手がける「GOOD NEWS」が、酒かすを使ったレモンケーキを共同で開発した。それぞれの地元でまちづくりに携わり、未利用食材の活用にも積極的に取り組む両社の経営者らの思いが、商品には込められている。
開発された商品は「早苗饗(さなぶり)レモン」。レシピを考案した都内の人気レストラン「PATH」オーナーシェフの原太一さん(43)によれば、酒かすとレモンは相性がよく、テリーヌを作る際にも組み合わせて使うことがあるという。「レモンの爽やかさと酒かすのほのかな酸味が合わさることで奥行きのある味わいに。お酒が苦手な人でも楽しめる、酒かすの可能性がさらに広がるお菓子にできたと思う」と原さんは話す。
「さなぶり」とは田植えなど農作業の一段落を祝う宴のこと。「稲とアガベ」(2021年創業)は昨春、酒造りで出る酒かすを廃棄せず「さなぶり」の料理のようなごちそうに変えよう、をコンセプトとする加工場「SANABURI FACTORY」をJR男鹿駅近くに開設。酒かすを使った調味料「発酵マヨ」などの製造・販売を進めてきた。
一方の「GOOD NEWS」(20年創業)は、未利用食を活用した菓子製造で知られ、バターを作ったあとのスキムミルクを使った「バターのいとこ」など人気商品は数多い。
稲とアガベの岡住修兵社長(36)とGOOD NEWSの宮本吾一社長(45)は以前から親交があった。
「未利用食を活用した商品を、地域の産業や雇用創出につなげている宮本さんたちの取り組みはすごい。このお菓子を通じて、多くが廃棄される酒かすのことをさらに広く知ってほしい」と岡住社長。宮本社長も「何かを作って、それがまちづくりにつながっていく。岡住さんがやっていることに共感とリスペクトをずっと感じ、いつか一緒にやりたいと思っていた」と振り返る。
国内で生成される酒かすは年間約3万2千トン(商品開発時の国税庁統計から)。1グラムでも多く活用し、廃棄による環境負荷を減らそう――。箱に印刷した「1 or MORE/32000t/YEAR」に込めたメッセージだ。
3個入りが1箱864円(税込み)。「ココナッツ」「ピスタチオ」など4種類の詰め合わせもあり、各社経営の店舗などで購入できる。(杉山圭子)