現場へ! 文化財どう活用(5)
文化財を守りながら上手に活用するには、どうすればいいのだろう。文化庁が現在、その要として推奨するのが「文化財保存活用地域計画」だ。市町村が計画を定め、文化庁が認定する制度で、2019年にスタートした。
市町村は指定・未指定を問わず、地域の文化財を見渡して文化的特徴を把握し、浮かび上がった課題をどんな方針でどう解決するかを、5~10年単位の事業プランで提示する。
文化庁は、保存活用地域計画が認定された自治体に対し、国の補助金の採否で優先したり、補助率をあげたりする措置をとる。
計画作成のために調査を進める過程で、それまで知られていなかった文化資源が見つかることも。19年に認定第1号となった茨城県牛久市では、小説「橋のない川」の作者、住井すゑが長く執筆活動を行った屋敷が市内にあることが判明。遺族から寄贈を受けて文学館を設立した。1903年に設立された日本初の本格的なワイン醸造場「牛久シャトー」の周辺は地域計画の歴史文化保存活用区域に指定され、シャトーの園内に残るブドウを運ぶために使われたトロッコ軌道の跡などの整備も進んだ。市環境経済部参事の木本拳周(たかちか)(44)は「保存活用地域計画が公開され、文化財の現状が広く認識されたことで、市役所内部や所有者との折衝がしやすくなった」と語る。
今年7月に認定された愛知県…